モルタル外壁のクラック補修と弾性塗料の種類・費用

目次

第1章 クラックと処置方法

モルタルの外壁は必ず大なり小なりクラックが入りますが、割れの程度によって建物に与えるダメージが違います↓はヘアークラックと呼ばれる、微小な割れです。モルタル内部がどうなっているか? 掘ってみました。

【▼マウスか指を乗せると掘った後の写真に変化します】

ヘアークラックと、掘削してモルタル表層の割れを確認した状態の比較

割れているのは、塗装膜とモルタル表層部のみで、この程度であれば、躯体内部には、そこまで水が浸入しません。一般的な木造モルタル外壁の場合、構造はこのようになってます。*モルタルの上に各種塗装仕上げを施している訳です

モルタル外壁の構造。内側から下地板、防水紙、金網、モルタルの順に重なる断面図


クラックが入る原因のひとつとして、モルタル自体の収縮、構造木材の乾燥収縮などで、動きがあるためで、その収縮によるクラックを緩衝させるために、割れを集める目的で「誘発目地」を作っています「板チョコ」を割ると、凹んだトコからパキっと割れる原理と同じで、この部分は あえてモルタルを薄くしているのですが デザイン性と新築時の左官業者の手間賃が増えるのを懸念し、価格競争の激しい都心部では省略されてる事が多いそうです

誘発目地

話は少し脱線しましたが、上記のような軽度のヘアークラックであれば再塗装の際の下地補修としてはシーリング材をクラック表面に乗せて、湿った刷毛で 刷り込んでいく といった方法が一般的でこの程度の症状なら それで特に問題はありません。

シーリング補修

問題なのは、↓のような幅0.4mmを超える太めのクラックです。 下写真は窓サッシの角から入ってる割れですが構造的に負荷(歪み)の激しい箇所に多く、内部の筋交いが不足している とか原因は様々で、先程の軽度の「収縮割れ」の時と違いクラックを掘ってみると、モルタルの深部まで貫通している割れ というのがよくわかります。

【▼マウスか指を乗せると画像が変化します】

窓角の幅0.4ミリを超えるクラックと、掘削して深部の破断を確認した状態の比較

これくらい割れていると、雨水は必ず入りますし↑のようにモルタルごと破断している場合は、このクラックを境に「壁が動いている」事も想定されます。但しモルタルの下には防水シートが張ってるんで、水が浸入しても雨漏れには直結しませんが防水シートの上の金属製のラス網が酸化、膨張し、やがてはモルタル自体がプカプカ浮き易くなります。下写真は、クラックを境に浮いたモルタルを撤去したところで、破片を裏返してみると、ラス網が錆びているのがわかります

【▼マウスか指を乗せると破片を裏返した状態に変化します】

浮いたモルタルの撤去と、破片の裏面に見られる錆びたラス網

↑ここまで進行する前に手をうっておいたほうが良いのですが、私が塗装会社勤め時代は、このようなクラックが入っていても、軽度のクラックと同じ処置で済まして、即座に塗装工程へ移ってました。(それが普通です)しかし、2〜3年後 経過を見にいくと、やはり同じ位置から割れていましたので現在では下記のような「Vカットシーリング法」で対処する事が多いです。

Vカット

クラックに沿って、深さ 幅ともに1cmくらいの溝を掘り、そこにシーリング材を打設していくという工法です

Vカット補修と表面補修の断面比較。V字溝にシーリングを充填し、表面を樹脂モルタルで整える

塗料の厚みがどんなに厚く塗っても2mmにも満たないのに対し、塗料よりも遥かに弾力性のあるシーリング材を6〜7mmくらいは充填する事ができます。  下記は、その処置の様子のビデオです

*大きな音で出ます 音量注意!

しかし、この方法の弱点として、外壁面にミミズ腫れのような手術の痕跡が残ってしまいますのでそれを目立たなくする為に、手間と技術を要します。(下記に一連の工程を解説していきます)① 溝を掘る電動工具に専用の刃を装着し、溝を掘ります。*細部はこの刃じゃ掘れないので専用の小さい刃にチェンジします

【▼マウスか指を乗せると画像が変化します】

クラックに沿って溝を掘る作業と、狭い部分で使う小径の刃

② 周囲の模様と肌を合わせるため部分吹き付けをするんですが、その掘った箇所だけ吹き付けできないので「ボカシ」の目的で、掘った周辺部の塗膜の模様を削って滑らかにしておきます

周囲塗膜除去

クラックの周囲を叩いてみて少し浮き気味だな、と判断した場合は、ステンレスビスで固定する時もあります
*症状の酷い場合は左官業者を連れてきて周囲を改修する事もあります。

ビス固定

③ 溝内部を、強い風の出る機械でエアブロー清掃。

清掃

④ この溝にシーリング材を充填するための接着剤(プライマー)を塗布。*必ずメーカー専用品です

プライマー塗布

⑤ プライマー塗布後30分以上〜当日以内にシーリング材を打設後ヘラ押さえ。クラック表面に刷りこむだけの補修とは比べ物にならない程のシーリング肉厚が確保できます。

【▼マウスか指を乗せると画像が変化します】

クラック補修の溝へのシーリング材充填とヘラ押さえ

⑥ ここからの工程は手術跡を消す工程になります。シーリング材は、どれだけ厚く打っても少し痩せて凹んでしまうので溝の段差をフラットにするべく少々特殊なモルタルで埋めていきます。これも1回じゃ平滑にならないので乾燥後もう1回コテ塗りちなみにツルツルのシーリングとモルタルは接着性が悪いので、シーリングが乾く前に砂をかけてザラザラにしています。←先駆者の曽根塗装店から教わりました

【▼マウスか指を乗せると樹脂モルタル2回目コテ塗り後へ変化します】

樹脂モルタルによる溝の埋め戻し1回目と2回目の仕上がり比較

⑦ この後、周囲の模様を復元するのですが、その為の接着剤的下塗り(シーラー)を塗布

シーラー塗布

⑧最終工程である既存模様の復元。吹き付けで行います(リシン、吹付タイル etc)
【▼マウスか指を乗せると模様復元後写真に変化します】

クラック補修箇所の、吹き付けによる外壁模様の復元前後

これらが全て完了した時点で、ようやく刷毛やローラーで外壁塗装です。ここまでの工程が ある程度うまくいっておけば 塗装完了後は補修した痕跡が そんなにわからないです

【▼マウスか指を乗せると外壁塗装後の写真に変化します】

大きなクラックの補修前と、模様を整えて外壁塗装を終えた後の比較

といったように掘ってシーリングを打設するだけならそれ程でも無いですが、痕跡を消すのがけっこう大変なので仮に この処置をする箇所が20箇所くらいあった場合、4〜6人ぶんくらいの人件費と材料費数千円ぶんくらいの工事原価が発生します。で、ここまでやっても絶対割れないという事ではなく、躯体の動きが多い箇所ではこの後の塗装仕様によって割れたり割れなかったりします。ですが、仮に同じ箇所が割れても内部にシーリングを詰めてあるので内部に水が浸入する事はありません。

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▼下記はこういった下地調整を施して塗替えたお宅の工事記録です。 より詳細な内容をビデオと写真で掲載してます

第1章では、塗る前の下地調整についてがメインでしたが、第2章では、この後行う塗装仕様についてです近年「ひび割れに強い弾性塗料」が流行ってますが、どの弾性塗料も同じような性能なのか?検証VTRも掲載しております。


第2章 弾性塗料の種類と費用

モルタル外壁のクラック発生を抑える為には、建物(下地)の動きについていけるように、弾力性のある塗料を、厚く塗る必要がありますが3年程度で「カチカチ」になる弾性塗料や、20年経過後も「モチモチ」してる弾性塗料もあり、材料、工程数、予算 全てに差が出ます

そこらの事を解説していきますが、その前に、厚く塗布する為の道具である ローラーを解説します。

通常のウールローラー

ウールローラー

厚塗り用の砂骨ローラー(マスチックローラー)

砂骨ローラー

ウールローラーでの通常塗りの場合と、砂骨ローラーを用いての厚塗りの場合 ↓を見れば違いがわかりやすいと思います

ウールローラーの場合、塗布後も既存の模様がそのまま残るのに対し、砂骨ローラー厚塗りの場合、既存模様は消えなみ型(ゆず肌)模様になります。 *それぞれの写真にマウスを当ててみると違いがよくわかります。

ウールローラーでの塗布後

既存の外壁模様と、ウールローラーで模様を残して塗装した状態の比較

砂骨ローラーでの塗布後

既存の外壁模様と、砂骨ローラーの厚塗りで凹凸をつけた状態の比較

砂骨ローラーでの厚塗り用の材料は、もともとがマヨネーズ状のドロドロした液体で、1缶で塗装可能な面積も少ない為 1現場で消費する材料缶数も多いです。

砂骨ローラーによる厚塗りで使用した塗料缶を並べた写真

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同じ「弾性塗装」でも、中身は違います

上記の「塗り方の違い」を踏まえて、ここからは代表的な3つの塗装仕様を比べていきます。

仕上がりの見た目は似ていても、何を・どの工程で・どれだけ塗るかによって、塗膜の柔軟性も、材料費も、かかる手間も変わります。まずは全体の違いを表にしました。

比較項目① 微弾性フィラー仕様② 単層弾性仕様③ 複層弾性仕様
塗る順番微弾性フィラー厚塗り 1回
+上塗り 2回
シーラー 1回
+単層弾性上塗り 2回
シーラー 1回
+高弾性主剤厚塗り 2回
+弾性上塗り 2回
合計工程数3工程3工程5工程
厚みをつける層下塗りの微弾性フィラー仕上げも兼ねる単層弾性塗料上塗りとは別の高弾性主剤
柔軟性を見るポイント「微」弾性の下塗りを厚く塗る仕様。厚みだけでクラック対策を判断しない本ページの施工例では、3年後に硬化を確認本ページの類似仕様の施工例では、20年以上経過後も柔軟性を確認
材料費の試算100,000円83,000円169,000円
延べ作業量の目安6〜7人工6〜7人工10〜12人工
当店の経験・考え方クラックの発生が少ない建物では採用することがあります以前は採用していましたが、掲載事例などの経験から使わなくなりました柔軟性を担う層を別に設ける分、工程・材料・手間が増えます
横に入りきらない場合は、表を左右にスクロールできます。柔軟性の記載は本文の施工経験・観察例で、同じ条件での比較試験ではありません。

金額の前提:外壁面積120㎡として、元記事で示した単価・缶数による試算です。

「人工(にんく)」とは:1人が1日作業する量を1人工と数えます。

材料費を比べると

外壁120㎡/元記事の単価による試算

① 微弾性フィラー100,000円
② 単層弾性83,000円
③ 複層弾性169,000円
③の材料費は①の約1.7倍、②の約2倍。このほかに、①②は6〜7人工、③は10〜12人工の人件費を見込んでいます。棒グラフは材料費だけの比較で、工事総額ではありません。

① 微弾性フィラー仕様|下塗りを厚くする3工程

微弾性フィラー厚塗り1回 → 上塗り2回

微弾性フィラーの厚塗り1回と上塗り2回、合計3工程の塗膜断面図

下塗りに、マヨネーズのようなドロドロした微弾性フィラーを砂骨ローラーで厚く塗り、その上から仕上げの塗料を2回塗る方法です。私も、クラックの発生が少ない建物では、この仕様で塗り替えることがありますし
モルタル壁の厚塗り仕様といえば ほとんどの塗替え現場でこれが採用されていると思います

肉厚がつくので頑丈そうに見えますが、下塗りはあくまで「微」弾性です。私が知る限り塗装後2年に満たないうちにカチカチになっているのを確認していますので この仕様の場合の厚塗りは弾性強度を求めるものではありません

② 単層弾性仕様|厚みと仕上げを兼ねる3工程

シーラー1回 → 単層弾性上塗り2回

シーラー1回と単層弾性塗料の上塗り2回、合計3工程の塗膜断面図

①と違い、上塗りに使う単層弾性塗料そのもので厚みをつける方法です。

会社勤めの頃の私は「弾性シリコン塗装」という名前を売りに、この仕様をよく使っていました。ただ、以前に施工したお宅で3年後の塗膜を確認すると、期待した弾力性は残っていませんでした。その経験から、当店ではこの仕様を使わなくなりました。後ほど、その検証動画を載せています。

通常の上塗材のシリコン樹脂塗料は1缶あたり13000円~16000円ですが この単層弾性のシリコンは1缶7000円前後で入手可能です。厚みをつける為の塗料なので シリコン含有率は低く 対候性は劣ります。
その割に まともに塗ると缶数を要し 材料費は①と大差なくかかるので 採用のメリットが無く 近年ではこの仕様で塗る現場は ほとんど見なくなりました。 が、元々ドロドロの同材料を水でかなり薄めてウールローラー仕上げすると 通常↓これくらいの数量必要なものが 点線から右(4缶位)で激安に仕上げる業者も稀に存在するのでお気をつけください

並べた塗料缶のうち、点線右側の4缶を区切って示した写真

③ 複層弾性仕様|柔らかい層を別につくる5工程

シーラー1回 → 高弾性主剤厚塗り2回 → 弾性上塗り2回

シーラー、高弾性主剤2回、上塗り2回を重ねる複層弾性仕様の5工程断面図

3種類の材料を使い、合計5工程で塗膜をつくる方法です。中間に高弾性主剤の層を設け、その柔らかい層を守るように上塗りを重ねます。上塗りにも、中の柔らかさに追従できる弾性タイプを使います。

下の写真は、私が塗り替えを行った、築20年以上のお宅です。新築時にこれに似た仕様で塗られており、表面の色艶は褪せていましたが、塗膜には柔らかさが残っていました。

たま様

通常 築20年を超えて初回の塗替えだと あちこちにクラックが入っているのが普通ですが このお宅は新築時の③仕様の おかげで お風呂場窓下に1カ所だけクラック という驚きの結果でした

クラック

その時の様子を書いている記事がこちらです。

一方で、3種類の塗料による「5工程」になるので ①②よりも当然 手間と材料費が嵩むデメリットがあります

動画で比べる|経年後の塗膜はどうなっていたか

どちらも、実際のお宅で塗膜を確認したときの動画です。建物・使用材料・施工条件が異なるため、「どの塗料も必ずこの年数でこうなる」という比較ではありません。

② 単層弾性の施工例
施工後3年の塗膜

私が以前の会社で施工したお宅です。3年後に確認すると、塗膜は硬くなっていました。

③ 複層弾性に似た施工例
新築塗装から20年以上の塗膜

当店で塗り替える前に確認した塗膜です。20年以上経過していても、柔らかさが残っていました。

材料費の内訳|何に差が出ているのか

比較表とグラフの金額は、次の計算によるものです。

仕様下塗り高弾性主剤上塗り(2回分)材料費合計
① 微弾性フィラー3,000円 × 10缶
=30,000円
なし20,000円 × 3.5缶
=70,000円
100,000円
② 単層弾性8,000円 × 1缶
=8,000円
なし7,500円 × 10缶
=75,000円
83,000円
③ 複層弾性8,000円 × 1缶
=8,000円
6,500円 × 14缶
=91,000円
20,000円 × 3.5缶
=70,000円
169,000円
外壁120㎡・元記事の単価による材料費の試算。人件費や利益を含む工事総額ではありません。

③では、柔軟性を担う高弾性主剤の分だけ材料が増え、その厚塗り2回の手間も加わります。

元記事で挙げた材料名・単価の例を見る

以下は元記事で紹介した例です。リンク先は商品名の検索で、記載した単価は当時の試算用です。実際に使う材料は、組み合わせと施工仕様を確認して決めます。

① 微弾性フィラー仕様
下塗り:アンダーフィラー弾性エクセル/水性ソフトサーフSG/ソフトリカバリー(元記事では1缶3,000円前後)。
上塗り:水系ファインコートシリコン/水性シリコンセラUV/水性セラミシリコン/クリーンマイルドシリコン/セラタイトSI(1缶15,000円前後〜30,000円超の例。計算では20,000円を使用)。
元記事で紹介したシステム名:オーデリウォールシステム/日本ペイント。

② 単層弾性仕様
シーラー:水性カチオンシーラー/水性ミラクシーラー(1缶8,000〜9,000円前後)。
単層弾性上塗り:DANシリコンセラ/セラミクリーン/ニュートップレスクリーン(1缶7,000〜8,000円前後)。

③ 複層弾性仕様
シーラー:②と同じ材料例。
高弾性主剤:DANエクセル/レナエクセレント(1缶6,000〜7,000円前後)。
弾性上塗り:水性弾性セラミシリコン/クリーンマイルドシリコン(弾性)/ビュートップシリコン(弾性)(1缶15,000円前後〜30,000円超の例。計算では20,000円を使用)。

塗装仕様を決める前に、現状の状態を見ます

同じ「弾性シリコン仕上げ」という説明でも、塗膜のつくり方と、工事の原価にはこれだけ違いがあります。
原価が違えば 当然見積りに反映されるので どこまでの仕様が必要か? を現状を見て検討して施主様に 説明 相談して 施工内容を決めていくというスタイルをとっております

モルタル外壁の事は AI北条塗装店に聞いてみてください

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当店HPのデータを元に疑問にお答えします。

回答するのは「北条塗装店AI」です。店主本人へのお問い合わせや、工事・訪問の予約受付ではありません。
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